必要な人に支援が届く社会に

エンパワメント連絡会主催「新型コロナで住まいを失う怖れのあるものの現状と背景について〜新型コロナ禍で何が起きているのか〜」寿支援者交流会事務局長 高沢幸男さんの学習会に参加しました。

そもそも好景気だったのか

高沢さんは、「コロナ禍以前、好景気と言われていたが、決して経済状況が良かったわけではなく、2019年の年収300万円以下の世帯が3割(国民生活基礎調査より)で、リーマンショック後の2010年と比較しても年収中央値はリーマンショック時より低い。平均所得は上昇しているので、格差が広がっただけ、好景気感がない。」と分析されます。

家賃の支払いに不安を持つ人はこんなにいた

横浜市の生活困窮者への住居確保給付金の当初予算は1500万円でしたが、4月に要件が緩和され※、5月に2億5300万円の補正予算、9月には更に、35億7000万円の補正予算が計上されました。

困窮問題は自己責任か

1990年代後半から国際競争力を維持するためにより安い労働力、原材料を求め、工場を海外へ移転し、国内では雇用が減少しました。国内の単純労働といわれる職種でも、多能工化が求められ高いスキルがないと働き続けることができないのが現状です。労働年功序列、終身雇用社会はすでに崩壊し、非正規雇用は2019年38.3%まで増加、女性の非正規雇用は7割にものぼります。「これは構造的な問題で、本人の努力が足りないわけではない」と高沢さんは指摘されます。貯金ができないまま、ケガや病気で働けなくなった時、高齢になった時に、生活に窮してしまう人が少数派でない社会になっています。そして、コロナ禍で、更に増加すると考えられます。

野宿をしている人は怠け者か

野宿生活に至った理由について、非自発的離職の方が7〜8割を占め、野宿生活の前の仕事は直前職の40.4%が常勤職員、最長職も常勤職員が54.9%(2016年厚労省全国調査)です。長期にわたって不安定な日雇いなどの非常勤の仕事をしていたのは1/3に過ぎません。また、野宿生活者に50歳から65歳の男性が多いのも、就労と高齢者福祉の制度の隙間に陥った結果であることがわかりました。
10万円の特別定額給付金についても、「住民基本台帳に記録されている者」に限定したため、給付申請さえできないケースが多発し、支援団体の施設を住所と認める対応で40件申請したということでした。「命の値段に差はつけない」というならば、一番困っている人に、真っ先に支援が必要であるはず。そういう社会の仕組みにならないと、誰もが尊厳をもって生きる社会にはなりません。
新型コロナウイルスの感染拡大は終息の兆しもなく、冬がやってきます。感染症の予防対策と人道的な支援は相反するものではなく、命を守るためにどちらも必要なことです。生活困窮の問題は自己責任では片付けられず、また、他人事ではありません。困っている人をキャッチするソーシャルスキルの向上と、誰も排除せず、本当に必要な人に支援が届く仕組みづくりの必要性を実感しました。

※住居確保給付金の対象者等

・対象者:以下のいずれかの方 (4月の法改正に伴い、②が新たに追加)
①離職・廃業後2年以内の方
②給与等を得る機会が当該個人の責に帰すべき理由や当該個人の都合によらないで減少し、離職や廃業と同程度の状況にある方
・支給要件:収入、保有している金融資産等の要件あり
・支給額例(上限): 単身世帯5.2 万円、2人世帯6.2 万円、3人世帯6.8 万円
・支給期間:原則3か月(最大9か月延長まで延長可)