山中市長と論戦 その2〜新型コロナ対策〜
現状認識
看護師として医療現場に立っていた私にとって、9月10日の本会議において議論となった「医療崩壊」については、あらためて市長に問いたい課題でした。
選挙期間中に市長の発した「医療崩壊する」という言葉が市民に不安を与えたという議員からの批判に対し、答弁の中で「感染症に対する医療と、通常医療ぎりぎりのところでできている」と自身の発言をやや修正した市長。あの発言は、副市長や局長の用意した答弁だったのではないかと感じたからです。そこで、市長にはあらためて医療崩壊の定義を質しました。
8月の救急搬送困難事案は1,596件で7月の3倍。自宅療養者からの救急要請、2242件のうち、不取扱は757件。約34%の方が入院できない状況を生み出しました。重症者ベッド67.7%使用、陽性者ベッドは83.5%使用で、50%以上のベッドが埋まっているステージ4以上の状態でした。
かつての同僚であるICU勤務の看護師からは、看取りの時でさえも最低限の家族しか面会できず、「親しい方の面会を断らなければならないのがつらい」という声、訪問看護の現場からは、「陽性患者の訪問はトリアージ目的。滞在時間は15分以内。ものを持ち込まない。」等、業務に多くの制限が生じる厳しい状況が聞かれました。
医療崩壊については、政府においても、「医療関係者等において様々に用いられているもので「政府として定義がない」とされています。
市長は医療崩壊とは「地域全体として、コロナ対応のために病床が極めて逼迫し、一般の救急医療やがん治療といった、通常医療に著しい支障が生じ、必要な医療を、必要な時に、受けられなくなる可能性がある、という状態」との見解を示しましたが、こうした現状を踏まえれば、市長が発した「医療崩壊する」いう言葉も一概に否定するものではありません。
利用者、従事者の安心ために、必要な時に、何度でも検査ができるように
第5波では、家庭内感染、子どもたちの感染も爆発的に広がりました。6月7日には前市長あて、神奈川ネットも参加する横浜ユニット連絡会より「保育・子育て支援等福祉従事者への新型コロナワクチン優先接種等にかかる提言」を提出しました。その後、市はエッセンシャルワーカーのコロナワクチン優先接種を進めています。この迅速な取り組みについては評価します。しかし、現在、多くの保育、子育て支援等福祉従事者が、感染予防や感染拡大を防ぐため自費でPCR検査を行っている実態があります。必要な時に、何度でも、検査ができるように行政の後押しが必要です。市長からは、県、国が実施する抗原検査キットの配布事業を見極めつつ、市としても必要な対策を検討していく答弁がありました。検査の拡充に向けて引き続き提案します。
コロナ禍における子どもたちの学びの機会の保障
横浜市は、GIGAスクール構想に基づき、ICT環境の整備、学習用クラウドサービスアカウント配布、教職員への研修、休業時等に児童生徒の学びを止めることのないよう、学習動画の作成など行ってきました。緊急事態の延長に伴い、現在も市立学校では分散登校が実施されています。オンライン授業等を行うにあたっては、家庭でのインターネット環境が不可欠です。教育委員会では、就学援助家庭を対象にWi-Fi環境整備に向けて、貸し出し用モバイルルーターを昨年度4000台購入していますが、貸し出しを希望した家庭は、約2000世帯にとどまっています。
一方、就学援助制度の対象ではないが、インターネット環境が整っていない児童・生徒は、登校日でない日に緊急受け入れ枠で登校し、学習していると聞いています。そこで、貸し出し用モバイルルータに余剰が生じているのであれば、就学援助制度を利用していない子どもたちにもモバイルルーターを貸し出せるよう柔軟に対応できるのではないか尋ねました。市長、並びに教育長は、ルータの貸し出しは、毎月の通信料が発生するなどの課題をあげ、「国の考え方に基づき、就学援助家庭でWi-Fi環境が整っていない家庭が対象」と原則を崩さない旨答弁がありました。
しかしながら、この事業は、学校の臨時休業等の緊急時においても、ICTの活用によりすべての子どもたちの学びを保障できる環境を早急に実現するために始めた事業なのですから、この緊急事態宣言下では柔軟に対応ができるのではないでしょうか。
コロナ対策については、市長が選挙で公約として掲げた「ワクチンの24時間接種」などに注目が集まりますが、子どもたちの学びの場や福祉の場の課題にも目を向けて課題解決に向けた議論を続けていきます。
今後の決算審査にもご注目ください。