IR問題、横浜市議会での論戦スタート

 9/3から、横浜市会第3回定例会がはじまりました。
傍聴席は114人の市民の皆さんで埋まり、関心の高さがうかがえました。
市長が提案した一般会計補正予算案には、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致に関連する事業費(4億円)も含まれています。私は、この事業費関連し、改めてIR事業の問題点を指摘市長の見解を問いました。

 IR誘致予定地の山下ふ頭では、港湾事業者が誘致に反対を表明し、移転交渉は難航すると思われます。埠頭の賃貸契約書では、契約の解除は、「貸付物件を公用又は公共の用に供するため必要が生じた場合は、この契約を解除することができる。」とあります。が、IRがこれに当てはまるとは考えられません。移転が完了しない状況で、IR誘致を推し進めることはできるのでしょうか。市長は、今後の見通しとして「移転協議を進めていく上では倉庫事業者等のみなさまや関係団体のご理解ご協力が大切。引き続き丁寧にご理解を求めていきます。」と答弁するにとどまり、合意のない誘致の課題が露呈しました。

市長は、IRの誘致において、経済効果だけを強調していますが、一方で社会的コストについては全く言及されていません。道路、上下水道、ガス、電気などを含めたインフラ整備に莫大なコストがかかることが容易に想定されます。この見積額と、これらを横浜市が負担する可能性があるのかについても質問しました。これについて市長は「事業者ごとに様々な計画案が想定されており、必要となるインフラ整備も様々。今後サウンディング調査等により各事業者の計画案が示されていきますので、市で行う調査なども踏まえて検討して参ります。インフラ整備の官民の負担についても併せて検討を進め、実施方針を策定する中で明確化していきます。」と答弁。社会的コストは全く明らかにされないままです。
IRの誘致による経済効果や増収効果の根拠についても説明を求めましたが、公表しないことを前提に事業者から提示されたデータであることを理由に、数字の根拠は一切示されませんでした。つまり、IR事業について行政には専門性がなく、事業者任せの計画とならざるを得ないということです。

市長は、IR特にカジノへの、外国からの誘客効果を狙っているとしていますが、DBJ・JTBF (株式会社日本政策投資銀行公益財団法人日本交通公社)による2018年の「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査によると、外国人が日本で見たいものは上位から「桜」、「富士山」、「温泉」、「日本的な街並み」です。国内の観光客、訪日観光客、どちらも日本独特の文化や景観を楽しみたいという意識が高く、宿泊先も日本旅館の人気が高いことがわかっています。
横浜のIR構想の施設は、すでに横浜にあるものであったり、外国人観光客の二ーズともマッチせず、想定されるような来場者数に繋がるとは思えません。

カジノの誘致に伴い、ギャンブル等依存症について多くの懸念の声が上がっています。

私自身も、病院看護師として、ギャンブル依存症の深刻な問題に向き合う経験をしました。多重債務のため一家離散し、命に関わる病気になっても受診をためらう方、競艇場近くで喧嘩をし、意識不明で運ばれてきた方、所持金0まさに身ぐるみ剥がされた方々や家族の苦悩をみてきました。

予算案では、懸念事項対策、依存症実態調査費用として3000万円の予算が計上されています。これまで、横浜市は、依存症対策の現状調査(2017年度に)は実施していますが、ギャンブル依存症の実態を把握するための調査は未だ行われていません。本来、IR誘致の方針を表明する前に、まず、実態調査を実施すべきです。

今回、横浜市が実施する依存症実態調査は、「国が平成28年から29年に実施した全国調査と同様の手法で、横浜市内におけるギャンブル依存症が疑われるものの割合を調査するもの。市内在住の成人3000人を対象に無作為抽出によるアンケート調査。まずは実態調査を行い、既存の公営競技やパチンコなどに起因した依存症の疑いのある方の数値を把握していきます。その上で本市に適した依存症対策を検討し、これまでの対策に加えて速やかに新たな対策を進めていく」というものですが、調査結果を踏まえて、IR誘致の再検討をする考えはあるのか、ないのか、市長の見解を質しました。これについても市長は「世界最高水準のカジノ規制と言われているIR整備法や政令ギャンブル等依存症対策推進基本計画などにより、具体的な依存症対策や関係者の役割分担が示されるなど、依存症の方を増やさない環境が整ってきた」という答弁に終始し、再検討しない方針でした。

昨年成立したギャンブル等依存症対策基本法に基づき、都道府県には地域の実態を踏まえた独自の計画を策定することが求められています。政令市である横浜市は、独自に依存症の予防教育、予防事業の実施、医療提供体制の整備、相談支援、社会復帰支援などの具体的な取り組みを提示すべきであり、独自にギャンブル依存症対策等推進計画を策定することも検討すべきです。
これについても、横浜市がイニシアティブをとる意思は表明されず、残念。

持ち時間一杯の質問となり、再質問はできませんでしたが、IR誘致の撤回を求める活動は議会だけにとどまりません。少子高齢社会、人口減社会における将来を見すえた成長戦略がカジノという発想には、共感できないというその声を、大きく広げていく活動に私も努力します。

質問を終えて、駆けつけてくださった方々、IR誘致に反対する皆さんと意見交換も行いました。